幽霊の林檎

Ghost Apple

【Ghost Apple / People In The Box】 

 

■時々、無性に聴きたくなる作品やアーティストって、誰にもあるんじゃないかなって思います。今日の気分は、これだな、昨日の気分は、あれだったし、明日の気分は、どれ?ってな具合に。

 

最近の僕の気分は、People In The Boxというバンドでした。

 

聴いたことある人には分かると思いますが、Peopleの音楽を聴いている時の、あの何ともいえない没入感みたいなのは、クセになります。

 

しかしながら、最近のPeopleの音楽は、昔よりはそんなにはまって聴いていないってのは、事実としてあります。僕が好きなのは、『Rabbit Hole』、『Bird Hotel』、『Ghost Apple』、『Frog Queen』、『Family Record』の5作品だったりしますが、どれも一昔前の作品です。もし聴いたことない方で興味が湧いたら、この辺りの作品をおすすめします。

 


■その中でも、一線を介して好きな作品が、『Ghost Apple』というアルバムです。この作品は、peopleの中でも特に異質な作品である。直訳すると、”幽霊の林檎”ということになりますが、そのアルバム名の意味は、よく分かりません。

 


まず、その曲名が異質なんです。順に、列挙してみると、

 

1. 月曜日/無菌室
2. 火曜日/空室
3. 水曜日/密室
4. 木曜日/寝室
5. 金曜日/集中治療室
6. 土曜日/待合室
7. 日曜日/浴室

 

もうここから異質なのだが、さらに、このアルバムは、どうも一枚で一つの物語を成しているのだという。どういう物語なのか、色んな考察があるけど、そういう話を聴くと、無類の考察好きの僕としては、自分でも考えてみたくなってくるんです。

 

ということで、このアルバムの物語を考察してみたいと思います。聴いたことない人は、置いてけぼりかと思いますが、まぁ…いつものことですね。

 


■まず、曜日順に曲が並べられているが、その時系列はバラバラであるらしい…なので、そこから考察していくのが、大変であるし、楽しいんです。

 

しかしながら、月曜日は、物語の総括のような曲だと思っています、火曜~日曜までの物語をまとめて説明しているように聞こえます。プロローグ的に、「結論からいうと、こういうことがあった」と歌っていて、そこにある真相を歌っているのが、火曜~日曜なのかな、と思います。

 

なので、月曜日を読むことで、物語の概要が分かってくるのではないか、ということで、そうしてみます。

 


【月曜日】

 

まず、太陽の中で…とか、君はもう生きれない…などのフレーズがあるように、この物語の”君”は、病気で、もう先は長くないという状況をイメージしました。おそらく、外に出ることができずに、病室でずっと過ごしているのでしょう。

 

青ざめた朝…とか、ワインを一滴…とかは、病室で点滴に繋がれている様子にも読み取れますし、何か変なクスリを打っている様子にも読み取れます。

 

ここで、サビになりますが、指を重ねて…とか、世界をゆすった…とか、は、多分この歌の、世界とか地球とかってのは、”君”を表しているのだと思います。逆に、”太陽”は、その対比で”僕”を表しているのかと思います。

 

2番に入ると、誰かが口をすべらせて…という描写が出てきます。僕のイメージでは、二人(僕と君)は病室を抜け出していて、それを誰かが告げ口をしたと。なので二人は、半ば逃避行的な生活を送っている感じかな、と思いました。

 

Cメロは、太陽がのしかかる…、君は進んで受け入れた…、などの描写は、太陽が”僕”だとすると、”僕”が”君”に圧し掛かっている状況を、”君”が受け入れた、つまり愛を受け入れてしまった、ということでしょうか。しかしながら、冒頭では、”太陽の中で愛されたら 君はもう生きれないかもしれない”とあるので、死を受け入れた、とつながるのかなと思いました。愛を受け入れてしまう=病室には帰りたくなくなる=死を受け入れる、ということでしょうか。

 

あとは、最後の、ずぶずぶ蝕んでいく…という描写は、僕がクスリを飲んで朦朧としている場面かな、と思います。というより、この歌は、そういう状況にある僕の回想だと思いました。

 


■ということで、月曜日の解釈から、火曜~日曜を時系列に並べると、

 

水曜→火曜→金曜→木曜→土曜→日曜

 

(もしくは、水曜→火曜→木曜→金曜→土曜→日曜。ライブでは、この順番でやることが多かったそうです。)

 

かなって思いました。それぞれの曜日の簡単な解釈は、下の通りです。

 

・水曜→逃げ出した描写、SEX
・火曜→君が居なくなる
・金曜→病室に君が運び込まれる、そして君の死
・木曜→君の死を受け入れられず、クスリで朦朧
・土曜→君の葬式の描写、死のうとしている僕(一回目)
・日曜→死のうとするが(二回目)、結局死ねない僕

 

(木曜は、火曜の後でもいいかもしれません。その場合だと、君が居なくなってしまったことを受け入れられない僕、ということになります。ただ、大きな物語の流れに変化はないように思います。)

 


■細かく読んでみます。

 

【水曜日】
メリーゴーランド…必死に逃げても、結局はグルグル同じところを回っているだけという描写でしょうか。
おもちゃの兵隊…二人を探している、警察や病院の人たちでしょうか。しかし、”みるみる僕らを追い越していく”というフレーズもあるように、二人は疑心暗鬼になっているだけなのかもしれません。
密室の蝶~君の祈り…自由になりたい、と祈っても、空には届かない=つまりは叶わない願いだ、ということでしょうか。

 

【火曜日】
火曜の歌詞は、全編通して、君が突然消えたということを表している描写であると思います。君が消えた理由は何だったのでしょうか。病室から逃げてきた二人だったけど、その二人での生活すらいつかは終わってしまうことに対して、嫌気がさして、逃げ出したのかもしれません。他の人の解釈では、君が飛び降りたというのがありました(【木曜】の歌詞に、”ひび割れたミラーボール”というフレーズがあり、これを、飛び降りて頭蓋骨が割れた、という解釈につなげていました)。

 

【金曜日】
運び込まれた君は、まだこの時点では生きていたのではないでしょうか。しかしながら、君は僕に死を懇願します、殺してほしい、と。その時点で、もしかしたら、僕は君に、「僕も君のあとを追って死ぬからね」と約束したのかもしれません。そこから、木曜日に続きます。
オピウム…アヘンのことで、麻薬の一種である。当然、違法薬物として扱われていますが、鎮痛、鎮静など目的で、医療用(モルヒネ用)としては使われています。

 

【木曜日】
木曜は、もう全体的に朦朧とした雰囲気が漂っています。この歌には、君が出てきません。他の歌には、実際に居るのか、それとも、(君が死んだ後の)妄想であるかは別として、君が必ず出てきますが、木曜日のみ出てきません。考えられることは、君は居ない、ということ。さらには、朦朧としている状態のような歌詞と、”これ誰かの夢だ”という言葉。合わせて考えますと、上述のように、君が居なくなったこと(死んだのか、行方をくらましただけなのか)を受け入れられずに、自暴自棄になってクスリを飲んでいる、という解釈です。

 

【土曜日】
木曜日とつながって、相変わらずクスリで朦朧としている状況かな、と思いますが、曲調は木曜に比べて、とても穏やかになっています。これは、衝動的だった木曜日から気持ちが一転して、何ていうか賢者タイムというか、そういう時が訪れたのかなって思っています。
それに加えて、何となく土曜日には、葬式の風景が思い浮かぶようなフレーズも出てきます。”君はカメラを逆さに構えて…”という部分が、”遺影”のような気がしますし、”顔のない人々”なども、葬列に並ぶ人々なのかな、と個人的には思いました。
(金曜の終わりに、”翌朝 報いの雨に濡れて”というフレーズがあって、土曜の始まりが、”朝、蒸気のような雨が…”とあるので、金曜→土曜になるのかもしれませんが、個人的には、クスリで朦朧としている、という繋がりから、金→木→土とさせてもらいました。)

 

【日曜日】
この日曜日は、全体を通して、”妄想の中での僕と君との会話”になっていると思います。その会話の中で、「僕はズルをして もう一回生きてしまって」「許せないよ 二度とは」というフレーズが出てきます。
個人的な解釈では、このアルバムの中で、僕は”2回”自殺を試みたのかな、と思っています。”二度とは…”という言葉もあるので、死のうと思って、でも生き延びてしまった、ということが、2回あったのだと思っています。1回目は、おそらく、木曜、土曜日の流れの中でだと思います。君を失った絶望から、あるいは君を失った時に、約束したのかもしれませんが、クスリを飲んで死のうとしたのです。しかし、結局は死ねませんでした。
2回目は、日曜日。同じく、クスリを飲んでかも知れませんし、浴室ということで、これも誰かの解釈にありましたが、手首を切って死のうとしたのかもしれません。しかし、これも失敗、死ぬことはなかったのです。
土曜、日曜では、君が僕を死ぬことを止めようとしている描写があります。君の願いは、僕が後を追って死んでしまうことではなく、「わたしのいのちを君にあげる パンケーキみたいに切り分けてあげる」、私の居ない現実でも生きてほしい、ということだったのでしょう。

 


■あと、日曜日の最後は、ノイズ音といいますか、テープが巻き戻る音のようにも聴こえますが、そういう終わり方になっています。

 

そして、月曜日のイントロも、その続きのような始まり方になっています。

 

これはつまり、日曜日→月曜日、そしてまた、水曜日へ…と、物語がループしていることを表しているのかもしれません。”僕”は、終わりのない悲しみを、ずっと繰り返してしまうのです。それは、死んでしまうよりも苦しいことなのかもしれません。

 


■ということで、これまでで一番長い記事になってしまいましたが、何はともかく、聴いてみるのが一番です。休み休み書いていると、一日中かかってしまいました。

 

僕の中で、紛れもなく、People In The Boxの最高傑作だとっておきます。何とも言えない世界観に浸り方は、良かったら聴いてみてください。

 

月曜日 / 無菌室(MVもすさまじい、最後まで見ること推奨)

youtu.be