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おじさんの音楽レビュー#30 『WHALE LIVING / Homecomings』

WHALE LIVING

【WHALE LIVING / Homecomings】

 

<収録曲>
01. Lighthouse Melodies
02. Smoke
03. Hull Down
04. Parks
05. So Far
06. Corridor(to blue hour)
07. Blue Hour
08. Drop
09. Whale Living
10. Songbirds

 


■Homecomings(ホームカミングス)というバンドは、これまでは英語詞の歌を歌うバンドだった。

 

決してボーカルの英語の発音がうまいというわけではなく、英語を棒読みしているだけのような感じだったけど、まぁそれはそれで、良い雰囲気を出していたと言えたと思う。良い曲もたくさんあった。

 

しかし、今回のアルバムでは、1曲を除いて、全編を日本語歌詞で歌うという試みをした。具体的には、最後の【Songbirds】以外は、全編日本語詞の歌になっている。

 


個人的には、この方向性については…大賛成なんです。

 

これは全く個人的な好みなんだが、いつからか、純正の日本のバンドなのに、英語詞で歌を作り歌うバンドに、あんまり興味を示さなくなった。もちろん例外もたくさんあって、ネイティブと何の遜色もないくらい上手な細美さんだったり、ワンオクやドロスのボーカルもずっと上手だと思っている。他にも、決して英語は上手とは言えないけど、好きなバンドは居るんだけど、あえて選んでは聴かなくなっていた。

 

その理由はとても単純で、僕自身が、歌詞を読みながら、これはどういう歌なんだろうって、色々と想像しながら聴くのが好きだから。英語詞の歌を聴いても、その意味が簡単には入ってこなくて、結局は和訳を読みながら聴くという、せっかく英語詞で書かれた歌なのに、その魅力を感じないというか、何か二度手間になっているような気がしていた。

 

だから、これはHomecomingsに限ったことではないんだけど、日本語歌詞には無条件で大賛成なんです。日本語はきれいだし、何より母国語だから、当たり前だが一番馴染むからだ。

 

Homecomingsが日本語歌詞でアルバムを作るという情報を、アルバム発売前から予め嬉しかったけど、作品を買って実際に聴いてみても同じ感想を抱いた。ほら、やっぱりこっちの方が良いじゃん!って。

 


※余談だが。

 

レコードショップでこのアルバムを買おうとレジに持っていったら、レジ係の男子店員がHomecomingsのファンらしくて、「ホームカミングス良いですよねー。僕も好きなんですよ」と、珍しく話しかけてきた。

 

嬉しかったので、今回のアルバムが日本語詞で作られたものだという話題を吹っかけてみたら、相手が食いついてきたので、こいつは営業じゃなくて、本当に好きなんだなって思った笑 短時間だったけど話ができてうれしかったぜ。

 


■さて、アルバムの紹介・感想。

 

曲調としては、ゆったりとした曲が多いので、そこまで盛り上がるところは無いので、退屈と言えば退屈かもしれない。まぁ、Homecomingsの魅力は、そういうところに元々あったし、ゆったり浸るにはちょうどいい一体感を作っている。

 

個人的には、今回のアルバムの曲ではないけれど、【I want you back】とか【Hurts】とか、ノリノリで結構好きなので、あれくらいのテンポの曲が、もっと聴きたいところだったけど。

 


今までのアルバムは、一曲一曲が短編小説のように収録されていたのに対して、今回のアルバム『WHALE LIVING』は、アルバム一枚でひとつの物語が語られているような作品になっている。

 

そういう意味でも、冒頭で紹介した日本語歌詞の試みは作品に合っていると思う。ちゃんと物語を伝えるためには、やっぱ母国語でしっかり書いた方が、読んだ方もそれに浸ることができる。ゆったりとした曲が多いのも、その物語を丁寧に伝えることに特化しているのかもしれない。

 

だから、このアルバムを聴くときは、どんな物語が語られているのだろうって、自分なりに想像しながら聴くのが醍醐味だと思うし、そういう風に作られている作品は、自分としても好きなので嬉しい。そういう意味では、今までのHomecomingsにはない感覚で聴くことができる作品になった。

 


■アルバムタイトルであり、表題曲にもなっている、”WHALE LIVING”という言葉については、収録曲の歌詞の随所に表れる言葉では、”くじらのすみか”という訳し方が良さそうである。

 

INTERVIEW01 – WHALE LIVING

 

Homecomingsが語る最新作『WHALE LIVING』に込めた思いと制作時期に影響を受けた楽曲5選|特集|POPLETA

 

インタビューの中で、この”WHALE LIVING”という言葉について、作者の福富さんは、このように語っている。

 


福富さん「手紙を書いても出さないときってあるじゃないですか。読み返すと恥ずかしくなって出さずに部屋の引き出しにしまっている手紙とか。僕はあるんですけど、そういうのって結局伝わるようにも思ったんです。実際に出してはないし、相手に届いてもいないけど、なぜか言いたかったことや気持ちが伝わる――そういうことってよくある気がした。その背景を膨らませていったなかで、〈WHALE LIVING〉という場所が海の底にあり、郵便局じゃないですけど、そこを介して気持ちが届いているみたいなイメージをしたんです」

 

何か分かるようで、難しい、独特な設定だけど、だからこそ聴いた人が色々と想像できる余地があるのかもしれない。

 


個人的にも想像した物語としては、まず物語の舞台は「海沿いの街」を思い浮かべた。アルバムの中にも、随所にそういう場所を表すような言葉が出てくる。その街では、かつて”僕”と”君”が暮らしていたんだけど、理由はともかく、2人は離ればなれになってしまう。おそらく、”君”の方が、街を出てどこか遠くへ行ってしまったんだろうと思う。

 

何ていうか、2人で過ごした街を離れた”君”も、また同じように海沿いの街で暮らしていて、同じ海が2人を繋げているような、そういうイメージでこの物語を読んでいる。

 

そんな、離ればなれになった2人について、”僕”目線で”君”のことを想いながら暮らしているという様子を、このアルバム全体で歌っている、というような物語を想像している。

 

そして、離ればなれになった2人が、どうにもお互いに伝えることが出来ない想いが、静かに眠っているような場所を”WHALE LIVNG”という言葉で表わしているという感じかな。何ていうか、お互いに何か思い入れがあったのかもしれない同じ海に、時々ふっと一人でやってきては、会話をするように海に気持ちを吐き出すのかもしれない。ここに居ない、その人に向けて。

 

あるいは、”手紙”というフレーズが随所に表れるが、ボトルシップみたいに、海に手紙を流したのかもしれない。それは決して、相手に届くことはないけれど、”WHALE LIVING”という場所に溜まっていって、2人の手紙が会話をしているのかもしれない。

 


■ということで、全部は大変なので、印象に残った曲だけでも紹介しつつ、物語についてしゃべってみる。

 

01. Lighthouse Melodies

 

インタビューの中で、作者の福富さんが、この曲について、ゲームのMOTHERの中で使われている【Eight Melodies】との関連を語っていて、とても嬉しかった。僕自身も実は、ゲームのMOTHERシリーズ(1~3)は、定期的にやり直したくなるほど好きで、ゲームをする習慣がほとんどなくなった今でも、手元に残っている数少ないゲームのひとつである。

 

【Eight Melodies】は、ゲームの中では、子守唄という設定でもあるんだけど、そのイメージを思いながら、【Lighthouse Melodies】を作ったのだという。波が寄せて返すような音がバックで聴こえてきて、どこか知らない場所へとイメージが飛んでいく。鉄琴の音(?)とコーラスとボーカルという、シンプルな構成。

 

アルバムの中だったら、本の表紙的な曲になっている。早速、アルバムタイトルにもなっている”Whale Living”を表わす”くじらのすみか”という言葉も出てきていて、今から物語が始まっていくような雰囲気を作っている。

 


02. Smoke

 

1曲目でゆったりとしたところからの、【Smoke】の入りが好き。何か、一気に物語が始まっていくみたいな感じ。この曲自体もゆったりとしているけれど、アコギの音がすごく心地がいい。

 

この歌(というよりアルバム全体)の物語には、”僕”と”君”という必要最低限のキャラクターしか出てこないので、その二人の物語として自然に読んでいくことが出来る。

 

このアルバムの中の”僕”と”君”は、何らかの理由で離ればなれになっており、終始”僕”が”君”のことを想っているような形で物語が進んでいく。その離ればなれは、決して暗いようには感じないし、”僕”も前向きに生きているように読めるけれど、それでも時より、寂しさをにじませている。

 


忘れないように
ここにずっと書いておくけど
口ずさむ君がいなくなったら
煙の中で消えてしまう

 

”僕”と”君”をつないでいた、特別な歌があったのだろうか。2人で一緒に聴いた記憶、一緒に歌った記憶、そういう思い出を胸に秘めたまま、離ればなれの2人の日々が続いているという想像が膨らんでくる。

 


05. So Far

 

アルバムの中では、一番長い曲で、ボーカルの畳野さんの弾き語りの曲になっている。

 

タイトルの”So Far”、意味は二つあって、「これまでのところ」という意味と、「とても遠い」という意味。どうやら、前者の「これまでのところ」の方が、ネイティブには使われることが多いようだけど、この曲と、アルバムの物語に当てはめるとすると、後者の「とても遠い」が似合うような気がする。

 

ここで、少し気になる表現があって、

 


君に輪っかが
浮かんでたんだ
僕にはないからさ
喋ってごまかしたんだ

 

ここの輪っかって何だろうって考えた時に、その一つとして、”天使の輪っか”が思い浮かんだ。ということは、”君”は、もうこの世に居ない”故人”なのかなっていう想像もできた。だから、離ればなれになった理由としては、悲しいけれど”死別”も考えられるかもしれない。だから、手紙が届かないのも、そういう悲しい理由があったのかなって。

 

まぁ、あくまで極端な想像なので、あんまりこの解釈を当てはめて聴いているわけではない。

 


07. Blue Hour

 

この曲は、アルバムの発売に先立って、MVが前以って発表されていたので、アルバム発売前にも聴くことができた曲だった。

 

この曲だけ聴くと、あんまりイメージが膨らんでこなかったんだけど、アルバムの流れで聴くと、ああこういう曲だったんだなって、気付くことができるのも楽しいところだった。

 

”Blue”という言葉は、少しブルーな気持ちになっているという様子を表しているのと、時間的には、夜に差し掛かって少しずつ暗くなっていく夕方か、あるいは、少しずつ夜が明けていく朝方を思い浮かべた。そういう、どこか気持ち的に切なくなるような時間に、やはり”君”のことを想い出しているという状況かな。だから、”Blue”というよりは、”藍色”みたいな深い色を思い浮かべた。

 


秘密が言葉を漏らしたなら
散らばった
文字が浮かび出した

 

目をつぶって開いたら
僕らは寂しいまま?

 

何ていうか、寂しさを隠すように、ごまかすように暮らしているんだよね、この物語における”僕”は。気丈に振舞って、前向きに暮らしていかなくちゃって。自分の心の中に、隠すようにそういう閉じ込めていても、時々そこからにじみ出て溢れてくる寂しさ。そういうものと対峙しているような歌だと思う。

 

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09. Whale Living

 

このアルバムの表題曲。先述したとおり、”くじらのすみか”と訳すのが良さそうだが、実際にくじらが暮らしている場所なのではなく、2人の想いを繋げているような場所の象徴として、この作品の中では扱われている。

 


暖かな秘密の場所は
小さな家具
海の底
どこかであの手紙がふいに届くように

 

まさしく、この辺りがこのアルバムのすべてを象徴しているフレーズのように思える。お互い、手紙を出すことも照れくさくて、でもどこかで繋がっていて、確認し合うことはないけれど、同じようなことを考えているような気がしている、みたいな、何ていうか、第六感的なもので繋がっているのかもしれない。

 


10. Songbirds

 

アルバムの中で、唯一の英語詞の歌。散々、日本語がいいなぁと言ってきて、矛盾しているかもしれないけれど、結局は最後のこの曲がアルバムの中で一番好きだったりする。歌詞というよりは、Homecomingsの、これくらいのテンポの曲が好きだな。

 

リズと青い鳥』という映画の主題歌に選ばれて、アルバムの発売前にシングル曲として発表された。その時は、そんなに特別な曲には思わなかったけど、アルバムの最後に入っているのを聴くと、また雰囲気が違って聴こえる。

 

それは、ずっと言っている物語の一部として、新しい気持ちで聴くことが出来たからだ。インタビューの中でも、この曲を作ったことで、新作のモードに切り替えられたとあるので、ひとつの物語の始まりと言うか、まとめみたいな感じになっていると思う。

 


By making it a song,
Can I keep the memory?
I just came to love it at the time.
(歌にしておけば
 忘れないでおけるだろうか
 あの瞬間に好きになったことを)

 

ここの部分は、2曲目に紹介した【Smoke】に出てきた詞に繋がるものがあると思う。

 

2人の関係はどうだったんでしょうね?恋人同士だったのか、それとも、お互い気にし合っているけど、一歩その先に踏み出すことが出来なかった、親しい友達だったのかな。その辺りは、やっぱり聴いた人の想像ということなんだろうね。

 

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