おじさんと音楽

おじさんが気に入った音楽を語るブログ

おじさんの音楽レビュー#33 『ロストマン / BUMP OF CHICKEN』

ロストマン/sailing day

ロストマン / BUMP OF CHICKEN

 

■年末になって、こんなニュースが流れてきた。見た方が早いので、まずその記事を載せておく。

 

natalie.mu

 

要約すると、BUMP OF CHICKENが2003年に発表した曲【ロストマン】が、2018年の正月(1月2日・3日)に放送される箱根駅伝の中でオンエアされる、箱根駅伝に関するCMのテーマソングに起用された、というもの。

 

これに関しては、僕自身がBUMPを好きになったきっかけが【ロストマン】で、今でも大好きな曲なので嬉しいのだが、その反面で、「やっぱり昔の曲は素晴らしいね」という気持ちと、最近の曲の自分に対しての”ハマらなさ”を、改めて感じてしまい、少しモヤモヤが残ってしまう。

 

最近の新曲では、【ロストマン】を聴いた時のような、胸をぎゅっと掴まれるような気持ちをあんまり感じないので…ただし、【話がしたいよ】は別格だったよね、あれはすごい良い曲だと思う。

 

まぁ、何はともかく、【ロストマン】が好きな僕にとっては、嬉しいニュースが流れてきて、懐かしさがこみあげてきたので、この曲に対する想いと解釈を書いてみようと思い立ったわけです。

 


■さて。

 

BUMPと僕の最初の出会いは、高校生の時だった。【天体観測】が発表されて、すごい流行ったんだけど、その時は、特にBUMPにはハマらなかった。変わったタイトルの曲だなと、珍しさは感じたけれど、藤原さんと増川さんの顔の区別もつかぬまま、その時は過ぎていってしまった。

 

そこから少し時間が経って、僕は大学生になった。僕は暮らしていた街を離れて、大学に通うため一人暮らしを始めた。そんな、大学生になりたての頃のこと。

 

身近にあったレンタルショップに行った時に、有線か店員チョイスのプレイリストだったのか、それは定かではないが、店内で流れていたとある歌が、何故か耳に残ったことがあった。

 

これも定かではないけれど、「どっかで聴いたことあるような声だな」くらいは、思ったかもしれない。とにかく、いい歌だな、と記憶には残ったのだが、それがどういうバンドのどういう曲かは、検討もつかなかった。

 


それで、家に帰って、夜中に「カウントダウンTV」を見ていた時だった。レンタルショップで流れていた曲が、ランキングを見ていたら流れてきた。そうそう、この曲だった!と、すぐに思い出せるほど記憶に残っていた。

 

そこでアーティスト名と曲名を確認して、初めてそれがBUMP OF CHICKENの【ロストマン】という曲だということを知ることになった。

 

その時に、BUMPと言えば、そういえば高校の時に、【天体観測】で流行ったバンドだったよなぁって、思い出すことはできたんだけど、そこからどうなったかは知らなった。だから、別に悪い意味で言うわけではないが、あの【天体観測】のバンドが、こんな渋い感じの曲を歌っているんだって思った。

 

すぐに、件のレンタルショップにて、シングル『ロストマン / sailing day』をレンタルして聴いてみることになるのだが、これがまた、ドンぴしゃで僕の心を掴んだ。【sailing day】の方も、もちろん素晴らしい曲だったんだけど、やっぱり【ロストマン】は特別だった。

 

何ていうか、重厚で渋い感じだが、少しずつ盛り上がっていって、希望に向かっていくような曲調が、新しい生活を始めたばかりの自分には合っていた。

 


そして、やっぱり【ロストマン】の真骨頂は歌詞だと思う。

 


状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も思い出せるかい

 

こういう、語りかけるような歌詞で曲が始まるわけだけど、ここもまた、新しい生活を始めたばかりの自分には合っている歌詞だと思った。新しい生活の調子はどうだいと…しかも独りなので、自問自答するしかなかった。

 


■【ロストマン】の歌詞の個人的な解釈を書いてみると…

 

まず、【ロストマン】には、”僕”と”君”の2人の人物が出てくるわけだけど、この歌では、”僕”が”君”に別れを告げてるような場面、あるいは、別れたあとの”僕”の気持ちの様子が描かれている。

 


状況はどうだい 居ない君に尋ねる
僕らの距離を 声は泳ぎ切れるかい

 


強く手を振って 君の背中に
サヨナラを 叫んだよ

 

関係性は色々考えられると思うけど…例えば、古くから一緒に居た友達だったり、この曲のことを知ったときの僕の状況であれば、親の元を離れていく子どもなど…”僕”と”君”が居て、”僕”にとって、別れを惜しむ相手である”君”と、まさに別れなければならない場面に際して、あるいは、実際に別れた後の生活の中で、”僕”がその気持ちを吐露している、と考えられる。(あんまり、恋人同士という感じでは無いような気がするけど、どうだろうか)

 

というように、素直に読めば、”僕”と”君”とくれば、その両者は別人であると考えることが自然だと思うし、思い入れのある人が誰かいるのならば、そういう人を”君”に当てはめて読んでも、おそらく成り立つようにできていると思う。

 


■しかし、個人的には、この歌詞に出てくる”僕”と”君”は同一人物を表している…つまり、”僕”も”君”も、どちらも”僕自身”を表わしている、という物語を想像するようになった。

 

人は、きっと大なり小なり、日々色んな選択をしながら生きているのだと思う。小さいものを言えば、本当にキリがないけど、大きな選択と言えば、進学、就職、結婚などという、長きにわたって、自分の人生の方向性を決める選択というものが挙げられる。

 


そういう様々な選択を前にして、この【ロストマン】に出てくる”僕”と”君”は、それぞれ違う選択をした同一人物だという想像をした。

 

もう少し具体的に言うと、”僕”の方は、文字通りの現在の自分であり、”君”の方は、現在の自分とは違う選択をした自分だと想像している…何を言っているんだ?って感じだけど。

 

さらに言うと、”僕”の方が、より険しい道を進む選択をした自分というイメージになるかな。例えば、ある時点で、何か自分が叶えたい夢があったとして、でも頑張ったとしても叶うとは限らない…という状況で、それでも、夢を追うという道を選んだのが”僕”、そして、その夢を諦めて、無難な道を選んだ自分が”君”というイメージを当てはめている。

 

この歌に出てくる”僕”は、自分の選んだ道が正しかったのか、常に自問自答しながら(”君”に語りかけながら)も歩き続けているのだが、歌が進んでいくにつれて、少しずつ希望を見出していく、その気持ちの変化を読むことができる。

 



状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も思い出せるかい
選んできた道のりの 正しさを祈った

 

先程紹介した、出だしの1番Aメロの歌詞だが、”僕”と”君”が同一人物であるという解釈に立つならば、ここの部分は、”僕”が”僕”に尋ねているので、素直に現在の自分との対話であると読むことができる。

 



君を失った この世界で 僕は何を求め続ける
迷子って 気付いていたって 気付かないフリをした

 

1番のサビであるが、ここで初めて”君”という言葉が出てくる。さらに、続く2番のAメロでは、”状況はどうだい 居ない君に尋ねる”という歌詞になり、1番との対比と考えるならば、”僕”の心情としては、まさに”迷子”=”ロストマン”であり、あの時のあの選択は、別の選択をした”君”と比べてどうだったんだろうかと、さらに苦悩を深めていることが分かる。

 


しかし、そういう想いを振り切るように、次第に力強く気持ちを新たにしていくのである。

 


強くてを振って 君の背中に
サヨナラを叫んだよ

 


これが僕の望んだ世界だ そして今も歩き続ける
不器用な 旅路の果てに 正しさを祈りながら

 

2番のサビの歌詞であるが、ここはまさに、”君”との決別を表わしている部分だと思う。この時点で、”僕”はすでに、自分が”迷子”になっていることを自覚しているし、自分が”不器用”であることも認めているんだけど、まだ自分の旅の”正しさ”を願うことを諦めてはいない。

 

それを物語る強い言葉が、”これが僕の望んだ世界だ”という部分だろう。”君”というのは、要するに自分の”亡霊”であり、ここにいる”僕”こそが、選択した本物の自分なんだと。

 



ああ ロストマン 気付いたろう
僕らが丁寧に切り取った
その絵の 名前は思い出

 

余談だが、この【ロストマン】という歌は、元々は”シザーズソング”というものだったらしいけど(シザーズ / Scissors = ハサミという意味)、それはおそらく、ここの部分を表していたのだと思う。

 

ここの部分の解釈は、過去に縛られていたことからの脱却というものだろうか。ちょっと独特な言い回しだけど、”丁寧に切り取った その絵の名前は思い出”というフレーズは、いくら丁寧に切り取ったって、それは思い出に過ぎないんだよと…つまり、大切なのは今でしょ、ということを歌っているのだと思う。

 



君を忘れたこの世界を 愛せた時は会いに行くよ
間違った旅路の果てに
正しさを祈りながら
再会を祈りながら

 

そして、こういう歌詞で歌は締めくくられる。”間違った旅路の果てに 正しさを祈りながら”という、こんな風に全く真逆の言葉をくっつけるやり方って、藤原さんの書く詞のひとつの特徴だよね。

 

そもそも、この歌の中に出てくる、”正しさ”ってどういう意味なんだろうね?あるいは、”間違った”ってどういう意味なんだろうね?

 

本当は、その道を選択しただけでは、その道が正しいか間違いかなんて、誰にも分からないだろうし、そもそも、ある時点では”間違っていた”と思ったとしても、そこからもう少し歩いたら、また別の光明が見えてくるかもしれない。

 

だから、やっぱり、”自分が選んだ”ということを信じるしかないんだよね。それが、一番強い気持ちだと思う。だから、どこかで諦めたとしてもそれも同じことで、”諦めた”という選択をした自分を信じるしかないんだよね。

 

 

■ちなみに、【ロストマン】には、制作にまつわる一つの逸話があって。

 

この歌の作詞作曲を行った藤原さんは、【ロストマン】の作詞に、実に9ヶ月もの時間を要したというのだ。

 

9ヶ月間ずっと一つの曲の詞を考えているって、どういう心境になるんだろうね。どっかで、これでいいやって思っちゃうこともあると思うんだけど、そう思わずに、真摯に向き合って書いたんだということは、この9ヶ月という長い時間が物語っているように思う。

 

本当に【ロストマン】の歌詞は、完璧というか、緻密というか、どこにも無駄なフレーズがない気がする。さっきも言ったように、(僕自身の想像も大いに含めているけど)”僕”と”君”の対比のからくりとか、本当に秀逸だと思う。長い時間かけても、良いものが出来るとは、決して限らないとは思うんだけど、この【ロストマン】の歌詞を読むと、かけた時間の分だけ、言葉の重みが伝わってくるので、9ヶ月は必要な時間だったのだろう。

 


だから、ここまで読んできて、はたと思う…ここでいう”ロストマン”とは、藤原さん自身でもあったのかなって。

 

音楽の道を選んだ自分を”僕”、選ばなかった自分を”君”として、しかも9ヶ月もかけて、一番自問自答を繰り返したのは、藤原さん自身だったのかなって思う。

 

 

■ということで、長くなりましたが…。

 

紛れもなく、BUMP OF CHICKENの最高傑作の曲のひとつである【ロストマン】、どういう風にCMに使われるんだろうね。お正月の朝は駅伝を見て、【ロストマン】をチェックしてみてください。

 

ロストマン

ロストマン

  • provided courtesy of iTunes