ロストマン / BUMP OF CHICKEN

ロストマン/sailing day

ロストマン / BUMP OF CHICKEN

 

 

■リアルタイムで、現在は2020年の5月半ばです。

 

最近は、コロナ禍の影響により、大変な想いをされている方がたくさん居る中で、自粛や休校疲れに陥ってしまっている方もたくさん居ると思います。

 

そんな日々の中、長い時間"家に居ること"を、少しでもストレスに感じないように、逆に、楽な気持ちになってもらえるようにと、芸能人やミュージシャンの方々が、いつもとは違う特別なサービスを提供して、僕たちを楽しませてくれています。

 

過去に行ったライヴの動画(音楽やお笑い)を無料で配信してくださったり、あるいは、全く新しいライヴを生で配信したりと、家に居るファンたちを飽きさせない工夫をされています。

 

BUMP OF CHICKENも、そんなアーティストの一組です。何と、もうすでに映像作品としてリリースしている、2018年2月11日に、さいたまスーパーアリーナにて行われた「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」のライヴ映像を無料配信したのです。実に、1時間40分を超えるほんとに長いライヴ映像配信のサプライズは、多くのファンを楽しませたはずです。

 

僕自身は、この映像作品は持っていないので、初見で楽しんだのですが、実は個人的には、このライヴ映像配信よりも嬉しかったのが、これと同時に、過去のMVをたくさんアップロードしてくれたことでした。

 

そのMVの中には、僕がBUMP OF CHICKENを好きになったきっかけでもある、【ロストマン】という歌も含まれていました。

 

ということで、それがとても嬉しかったので、過去の記事の焼き増しになりますが、【ロストマン】という歌について、個人的な思い出や、歌の解釈を書いてみたいと思います。

 

 

 

 

ロストマン

ロストマン

  • provided courtesy of iTunes

■まず、BUMPと僕の最初の出会いは、高校生の時でした。

 

当時、【天体観測】が発表されて、すごい流行ったんですけど、一応は聴いたのですが、実はその時は、特にBUMPにはハマらなかったんです。変わったタイトルの歌だなと、珍しさは感じたのですが…藤原さんと増川さんの顔の区別もつかぬまま、その時は過ぎていきました。

 

そこから少し時間が経って、僕は大学生になりました。大学に通うため、一人暮らしを始めた頃のことです。

 

初めて暮らす街で見つけた、最寄りのレンタルショップに行った時に、有線か店員チョイスのプレイリストだったのか、今となっては分からないんですが、店内で流れていた"とある歌"が、何故か耳に残ったことがあったんです。

 

確か、「どっかで聴いたことあるような声だな」くらいは、思ったような気がします。とにかく、「いい歌だな」と記憶には強烈に残ったんですけど、それ以外は分かりませんでした。

 

それで家に帰って、夜中に「カウントダウンTV」を見ていた時でした。レンタルショップで流れていた歌が、ランキングを見ていたら流れてきたのです。そうそう、こんな歌だった!と、すぐに思い出せるほど記憶に残っていたんです。

 

そこでアーティスト名と曲名を確認して、初めてそれがBUMP OF CHICKENの【ロストマン】という歌だということを知りました。

 

その時に、そういえば高校の時に【天体観測】が流行ったバンドだったっけ、と思い出すことはできたんですけど、そこからどうなったかは知らなかったんです。だから、別に悪い意味じゃなくて、あの【天体観測】のバンドが、こんな渋い感じの歌を歌っているんだって思ったんです。

 

すぐに、件のレンタルショップで、シングル『ロストマン / sailing day』をレンタルして聴きました。これがまた、ドンぴしゃで僕の心を掴んだんです。【sailing day】の方も、もちろん素晴らしい歌だったんだけど、やっぱり【ロストマン】は特別でした。

 

静かで重厚な感じから始まって、徐々に盛り上がっていく感じの曲調からは、独りきりでも、少しずつ希望に向かっていくような勇気を感じさせ、新しい生活を始めたばかりの自分を励ましました。

 


そして、やっぱり【ロストマン】の真骨頂は歌詞だと思うんです。

 


状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も思い出せるかい

 

こういう、まるで友達に語りかけるように歌が始まるんですけど、自分に問いかけられたように思いながら…新しい生活の調子はどうだいと、僕は自問自答するように聴いていました。

 


■【ロストマン】の歌詞の個人的な解釈を書いてみます。

 

まず、【ロストマン】には、”僕”と”君”の2人の人物が出てくるんですけど、この歌では、”僕”が”君”に別れを告げてるような場面や、別れたあとの”僕”の気持ちの様子が描かれています。

 


状況はどうだい 居ない君に尋ねる
僕らの距離を 声は泳ぎ切れるかい

 


強く手を振って 君の背中に
サヨナラを 叫んだよ

 

関係性は色々考えられると思います。例えば、古くから一緒に居た友達だったり、この歌のことを知ったときの僕の状況であれば、親と親元を離れていく子どもなど…”僕”と”君”が居て、”僕”にとって、別れを惜しむ相手である”君”と、まさに別れなければならない場面に際して、あるいは、実際に別れた後の生活の中で、”僕”がその気持ちを吐露している、と考えることはできます。(あんまり、恋人同士という感じでは無いような気がするけど、どうだろうか)

 

…という具合に、素直に読んでいくと、”僕”と”君”とくれば、その両者は別人であると自然に考え、思い入れのある人物を”君”に当てはめて読んでも、おそらく成り立つとは思います。

 

ただ、何度か聴いていくうちに、全く違うことを思うようになってきました。

 


■個人的な解釈は、この歌詞に出てくる”僕”と”君”は同一人物を表している…つまり、”僕”も”君”も、どちらも”自分自身”を表わしている、というものです。

 

人は、大なり小なり、きっと色んな選択をしながら生きていますよね。小さいものを言えばキリがないですが、大きな選択と言えば、進学、就職、結婚などという、自分の人生の方向性を決める重要な選択を迫られる場面があるはずです。

 

そういう大きな選択を前にして、この【ロストマン】に出てくる”僕”と”君”は、それぞれ違う選択をした同一人物だという想像をしたんです。

 

具体的に言うと、”僕”の方は、言葉通り現在の自分であり、”君”の方は、"僕"とは違う選択をした自分を想像しています。さらに言うと、”僕”の方が、より険しい道を進む選択をした自分というイメージです。

 

例えば、何か自分が叶えたい夢があるとします。でも叶えるには努力が必要で、頑張ったとしても叶うとは限らない…という状況で、それでも、夢を追うという道を選んだのが”僕”、そして、その夢を諦めて、無難な道を選んだ自分が”君”というイメージを当てはめています。

 

この歌に出てくる”僕”は、自分の選んだ道が正しかったのか、常に自問自答し、”君”に語りかけながら歩き続けていきますが、歌が進んでいくにつれて、少しずつ希望を見出していく、その気持ちの変化を読むことができます。

 



状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も思い出せるかい
選んできた道のりの 正しさを祈った

 

先程紹介した、出だしの1番Aメロの歌詞です。ここから、”僕”と”君”が同一人物であるという解釈に立つとすると、”僕”が”僕”に尋ねているので、現在の自分との自問自答であると読むことができます。

 



君を失った この世界で 僕は何を求め続ける
迷子って 気付いていたって 気付かないフリをした

 

1番のサビで、初めて”君”という言葉が出てきます。さらに、続く2番のAメロでは、”状況はどうだい 居ない君に尋ねる”という歌詞になります。1番との対比と考えるならば、”僕”の心情としてはまさに”迷子”=”ロストマン”であり、あの時のあの選択は、別の選択をした”君”と比べてどうだったんだろうかと、さらに苦悩を深めていることが分かります。

 


しかし、そういう迷いを振り切るように、"僕"は次第に力強く気持ちを新たにしていきます。

 


強く手を振って 君の背中に
サヨナラを叫んだよ

 


これが僕の望んだ世界だ そして今も歩き続ける
不器用な 旅路の果てに 正しさを祈りながら

 

2番のサビの歌詞ですが、ここはまさに、”君”との決別を表わしている部分だと思います。この時点で、”僕”はすでに、自分が”迷子”になっていることを自覚しているし、自分が”不器用”であることも認めているのですが、まだ自分の旅の”正しさ”を願うことを諦めてはいないんです。

 

それを物語る強い言葉が、”これが僕の望んだ世界だ”という部分。”君”というのは、あくまで自分の”亡霊”であり、ここにいる”僕”こそが本物の自分であり、それを肯定しようとしているのです。

 



ああ ロストマン 気付いたろう
僕らが丁寧に切り取った
その絵の 名前は思い出

 

この【ロストマン】という歌は、元々は”シザーズソング”というものだったらしく(シザーズ / Scissors = ハサミという意味)、その名残りか、ここの部分に"切り取った"という言葉が出てきています。

 



君を忘れたこの世界を 愛せた時は会いに行くよ
間違った旅路の果てに
正しさを祈りながら
再会を祈りながら

 

そして、こういう歌詞で歌は締めくくられます。”間違った旅路の果てに 正しさを祈りながら”という、こんな風に全く真逆の言葉をくっつけるという、藤原さんの書く詞の特徴が表れています。

 

そもそも、この歌の中に出てくる、”正しさ”ってどういう意味なんでしょうか?あるいは、”間違った”ってどういう意味なんでしょうか?

 

本当は、その道が正しいか間違いかなんて、選んだ時点では誰にも分からないんだろうし、そもそも、ある時点では”間違っていた”と思ったとしても、そこからもう少し歩いたら、光明が見えてくるかもしれません。

 

だから、やっぱり”自分が選んだ”ということを信じるしかないんです。それが、ただ一つ自分が決める"正解"なんですよね。仮に、どこかで諦めたとしてもそれも同じことで、”諦めた”という選択をした自分を信じるしかないんです。

 

自問自答の末に、ロストマンはそんな答えにたどり着いたのだと、想像しています。

 

 

■ちなみに、【ロストマン】には、制作にまつわる一つの逸話があるようです。

 

この歌の作詞作曲を行った藤原さんは、【ロストマン】の作詞に、実に9ヶ月もの時間を要したそうなのです。

 

9ヶ月間ずっと一つの曲の詞を考えているって、どういう心境になるのか、想像だにできません。作詞に真摯に向き合って、考えに考え抜いて書いたんだということは、この9ヶ月という長い時間が物語っているように思います。

 

本当に【ロストマン】の歌詞は、完璧というか、緻密というか、どこにも無駄なフレーズがない気がします。僕の想像を大いに含んでいますが、”僕”と”君”の対比のからくりとか、本当に秀逸だと思います。

 

長い時間かけても、良いものが出来るとは、決して限らないとは思うんですが、この【ロストマン】の歌詞を読むと、かけた時間の分だけ、言葉の重みが伝わってくるので、9ヶ月は必要な時間だったんだと納得します。

 


■だから、ここまで読んできて、はたと思うんです…ここでいう”ロストマン”とは、藤原さん自身でもあったのかな、と。

 

音楽の道を選んだ自分を”僕”、選ばなかった自分を”君”として、しかも9ヶ月もかけて、一番自問自答を繰り返したのは、藤原さん自身に他ならないからです。

 

そう考えると、この【ロストマン】という曲は、実に人間くさくて、本物の血が通う、本当の意味での歌であると思うのです。

 

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